急な仕事で来られなくなった兄貴の代わりに、兄嫁のマユミさんを乗せて週末ドライバーを引き受ける事になった弟。風光明媚な山間の地。楽しげに笑う兄嫁の脇で、弟は、どことなく浮かない表情で、俯いていた。「そうだサトシ君。ガソリンスタンドのバイト、やめちゃったんだって?」「…うん。まあ」「そっか…」弟は今年で25歳になった。十代の頃から追い続けていた、ミュージシャンになると言う夢も、いよいよ現実と向き合わねばならぬ年齢になっていた。「またそんな暗い顔して…元気出して!」優しく言ってくれる兄嫁の笑顔が眩しすぎて、サトシは、逆に、辛かった。
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